徒然

映画や演劇をみるひと

パレード Team Unsui

『パレード』

Team Unsui

作・演出 喜安浩平ナイロン100℃/ブルドッキングヘッドロック

 出演  小野賢章、岸本卓也、早乙女じょうじ秋元龍太朗、角島美緒、橋口勇輝、小山めぐみ、嶋村太一

 

 

あらすじ  (公式HPより)

 

貧しい通りに生まれた優しい兄弟は🎩🐱ささやかな洋裁店の経営に成功し✌️飛ぶ鳥を落とす勢いの実業家になった✨

同じ通りで育った仲の良い幼馴染みも🚘一介の労働者からのし上がり👊注目の経営者になった✨

今、彼らは街🌃の覇権を巡り🌀激しく火花を散らしている💣💨

札束は鈍器💴銀行と死神が同義語💰😈の世界線🌎

投獄もオプション☠️のマネーゲームが🎲残酷な投資家たちのテーゼ🕊を打ち鳴らす🎶

嘘と真が飛び交う混沌の一夜🌙勝利を彩る黄金のシャンパン🍸🍾を飲み干すのは👀👀👀👀👀👀👀👀ただ一人😇‼️

 

 

 

 

あらすじだけみると「はぁ?」である。自己満系ファンタジーエンタメ舞台かと思う。

幕開けもビックリ、照明がハデッハデに輝いている中で、現実離れしたゴテゴテのメイクと衣装で着飾った二人組が、「あなたの夢はなに?」と歌い始めるところからはじまる、自己満系ファンタジーエンタメ舞台そのもののオープニングである。

 

演技体もひたすらオーバーで嘘くさいし、“オレンジなんとかストリート”だの“ネイビータウン”だの(←うろ覚え)、「カタカナの名前だとかっこいいでしょ」といいたげな名前の街の権利を巡って争うあらくれものたち、という設定もなかなか寒い。

 

ぼーっと舞台面を観ながら、この作品に6000円もかけてしまったという悔しさをかみしめていたところ、開始15分ほどで異変がおきた。

 

机の上になぜか置かれているサイコロを誰かが振ったところ、さっきまでのファンタジックな世界がパッと現実世界(?)に変ったのである。その場所はどうやらスラム街(?)にあるとある飲食店で、バイト達が盤上ゲームをしているようなのだ。

 

そこで繰り広げられている会話は、先ほどまでのファンタジー全開芝居と打って変わって皆さんどこかけだるげである。けだるげーに盤上ゲームをしている。

 

 

そして観客のわたしは気付く。

 

 

 

 

あれ、これ、モノポリーじゃね?

 

 

 

 

どうやらわたしたち観客は、「飲食店でモノポリーをやっているバイト達とその店長がいる世界」と「盤上のモノポリーの世界(バイト達が、自分が動かしている駒のキャラクターとなって繰り広げられている世界)」の二つの世界を交互に観ているようなのだ。

  

モノポリーというゲームは、すごろくの要領でサイコロを振りつつ、辿り着いた先の陣地を取り合い、独占したら、そこを再開発したり交渉により売ったり買ったりしながら自分の陣地や金を増やしていくという、至極現実味のあるゲームである。

 

本日はハロウィンのようで、だからバイト達は仮装衣装をつけている。外ではハロウィンの喧騒がどんどんヒートアップしていく。しかし最後の最後に明かされるが、実はこのスラム街も再開発の予定があるらしく、ハロウィンの喧騒かと思われたものは、それに対する暴動だったのである。(さらっと“暴動”というワードが出てきただけだが、“デモ”ではないところに、もはや理性的な抗議もできないほど追い詰められた民衆たちの様子を感じることが出来る)

 

 

そんな街で、モノポリーなんていうゲームを、18人の団体キャンセルをされたばかりのギリギリの飲食店で、やることのなくなったバイト達がやっているのである。

 

 

 私たちはこの「現実界」と「モノポリー界」を交互に観ていく中で、「現実界」の人々が置かれている状況や抱いている想いが、「モノポリー界」での商売的なやり取りとリンクして浮かび上がってくる。

 「現実界」でのバンカー(という役割がモノポリーというゲームにはある)が何気なく放つ「みんな勝たせたいんですけどねえ。誰かが負けないとゲームが終らないですから(うろ覚え)」という台詞や、店長が窓の外の喧騒をぼんやり眺めながら言う「大通りには大通りの、裏通りには裏通りの生き方がある。偉いやつに限ってそこらへんないまぜにするからねえ(うろ覚え)」という台詞が、なんとも重く心に響く。

 

 夢や希望はないけれど、それだからこそ生きていく。変わっていくものが多い中で、守りたいものを守っていく。二つの世界を行き来するなかでその結論を見つけていく主人公が清々しく気持ちがいい反面、これからもきっと大変な道を進んでいくことになるのだろうと思うと最高なハッピーエンドではない。

 「みんなの場所」は誰かにとっての大切な場所を奪ってできたものだし、「みんなが楽しい」はだれかの我慢があって成り立つものである。

「だれかの場所」を守ることを決めた主人公は、「みんな」からあぶれた「誰か」の救世主となるだろう。

 

 私はTeam Unsuiの誰のファンでもなかったので、多くの歓声を集めていたファンサービス的な演技やパフォーマンスに惹かれることはなかった。しかしこの度肝を抜く構成と、スタッフワークの素晴らしさ、楽しくアップテンポなやりとりなどで、かなり楽しむことが出来たし、いくつかの棘が心に残る、とても良い作品だった。

 

2020.10.7.